荻窪の庭と語る近代の記憶――荻外荘と隈研吾の展示棟

長い時間をかけて保存と修復が行われていた荻外荘。そして2024年7月には、新たに展示棟も加わり、より深くこの場所の歴史を感じられるようになりました。この展示棟は建築家・隈研吾さんが手がけたということで、こちらも楽しみにしていました。

重要な会談の場として

荻外荘(てきがいそう)、と読みます。難しい読みですね。私は読めませんでした。
玄関で靴を脱ぎ、注意事項を係の方から聞いて各自で見学となります。

平安神宮や築地本願寺などを設計した建築家・入澤達吉(1865-1938)の設計です。
1927(昭和2)年に大正天皇の侍医・入澤達吉の別邸として建てられ、その後、政治家・近衞文麿が移り住み、戦争回避に向けた話し合いなど日本の針路を左右するような会談が数多く行われた場所となりした。

「荻窪会談」の舞台となった客間

大きな空間と繊細なデザイン

外観は純和風、和室が多いですが、客間は洋風、応接室は中国風です。シンプルながらも螺鈿細工(貝細工)が施されたテーブルや龍の天井画など、おもてなしの場にふさわしい気品溢れる空間でした。

螺鈿細工が輝くテーブルは華奢な作り
白地に龍の天井画が映える
床にも龍のデザイン

とても広い邸宅ですが、廊下の幅や天井の高さでより空間を広く感じられました。
古い家の建具は職人技による精巧な作りがとても魅力的です。こちらの窓の建具もそのデザインと使い込まれた独特の風合いで雰囲気を高めていました。

広い廊下に窓の細工が引き立つ
テラスのような広縁

歴史と自然が調和する庭

大きな窓から芝生広場の緑が輝くように目に飛び込んできます。
高い建物がなく視界が開け、庭の緑と空の青さが心を落ち着かせます。

季節の移ろいを堪能出来そうなピクチャーウィンドウ

そして玄関側にはまるで家を守るかのように木々が囲んでいました。

木漏れ日の道を辿って玄関へ

別棟には庭を楽しめるように椅子が並んでいます。ぼーっと庭を眺める贅沢な時間を楽しみました。
こちらは小さいですが和風の落ち着いた庭です。
この家にまつわる数々の歴史を静かに物語っているようでした。

素朴な椅子が並んだ様子がいい
しばし時を忘れ庭を眺める
増築された別棟とお庭

展示棟でひとやすみ

荻外荘から道を挟んだ向かいに、隈研吾さん設計の展示棟がオープンしました。
和風な外観ですが、反り上がった屋根がリズミカルで、とても明るく気軽に入れる建物でした。
2階の展示スペースでは、荻外荘に関する資料や、荻窪の文化などを展示しています。
こちらは入場無料なのでぜひ立ち寄ってみてください。

敷地に合う形を考えたら多角形の屋根になったそう。

そして1Fのカフェでひとやすみ。お菓子と飲み物のセットをいただきました。
こちらでもお庭を眺めながらのんびりくつろぐことが出来ます。

まるでお庭でいただいているよう。(室内です) ボリューミーな最中で心もお腹もほっとひといき

最後に

とても暑い日でしたが、意外にも邸内は冷房が効いていました。
汗も引き、椅子に座ってお庭を眺める時間はとても落ち着くひとときでした。
荻窪には3つの庭園、「荻外荘公園」、「大田黒公園」、「角川庭園」があり、角川庭園もまわりたかったのですが、この日の気温は危険だったので、無理をせずまた秋のお楽しみとしました。
歴史を感じる建築と、心を癒す庭の両方を楽しめる貴重な場所、ぜひまた訪れたいと思います。

▶荻外壮の詳しい情報はこちら (荻窪三庭園)

住所:東京都杉並区荻窪2-43-36
開園時間:9:00〜17:00(最終入園16:30)
休園日:水曜日、年末年始(12/29-1/1)
JR中央線・総武線「荻窪駅」、東京メトロ丸ノ内線「荻窪駅」より徒歩15分
観覧券   一般300円、小・中学生150円(就学前の子どもは無料)

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