「ぼっち」という言葉に、どんなイメージが浮かびますか?
一人、友達がいない、孤独、寂しい……そんな印象が多いかもしれません。
でも、私は「ぼっち」が好きです。
それは、人に影響されずに自分の好きなことをしたいから、という少々自分勝手な考えからです。
私のような考えの方もいれば、一人では寂しいと「孤独」に悩む方もいらっしゃいます。
ぼっち、孤独について、分かりやすく、でもとても深く、考えさせてくれる本を読みました。
ぼっちのままで居場所を見つける—孤独許容社会へ 河野真太郎著 ちくまプリマー新書
「アナ雪」のエルサは、本当に孤独だったのでしょうか?
運命の恋人、姉妹の絆……孤独を救うのは、人とのつながりだけなのでしょうか。
本書では、映画やマンガ、英文学の名作、あるいは歴史の中の女王の物語を読み解きながら、「良い孤独」がある社会、孤独を許容する社会とは何かを考えます。
新しい時代に向けた、あたたかい視点のカルチャー批評です。
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装幀はクラフト・エヴィング商會なのも良い!
私たちは、一方では孤独を恐れ、もう一方では独りになれないことに苦しんでいます。その両方を乗り越えて、「ぼっちのままで居場所を見つける」ことはできるのでしょうか。それも、個人の努力だけで実現するのではなく、私たちが孤独でいることを許容してくれるような社会を構想することは可能でしょうか。
『ぼっちのままで居場所を見つける』はじめに P17~18
本書はその探求です。
物語が教えてくれる孤独
著者の河野真太郎氏は、心理学者や社会学者ではなく、イギリス文学・文化、それからポピュラー・カルチャーを研究されています。
「物語はある時代の気分や多様な経験をうまく典型化して表現しているし、逆にそんな物語を通じて私たちは現実を理解している」という著者らしい視点で、『アナと雪の女王』『ロビンソン・クルーソー』『ジェイソン・エア』『ヴィクトリア女王から葬送のフリーレン』『シャーロック・ホームズ』『ヴージニア・ウルフ』などを例に物語とその登場人物を介して、孤独への真の対処方法は私たちの社会をめぐる想像力に秘められていると提案してくれています。
良い孤独と悪い孤独 エルサはどうなった?
とてもわかりやすく面白かったのは、第一章の孤独を四種類に分け、アナと雪の女王のエルサに置き換えて考えることでした。
・四種類の孤独の登場
ワンリネス・・・単に一人であるという事実
アイソレーション(孤立)・・・物質的・社会的な孤立
ロンリネス・・・苦しみ、寂しさをもたらす否定的な孤独
ソリチュード・・・解放、創造性をもたらす肯定的な孤独
・エルサの孤独に置き換えてみる
1.最初、エルサはロンリネスを感じています。
2.そのロンリネスの原因は、孤児で王女で魔法の力を隠さなければならないアイソレーションによるものです。
3.王国から逃走したエルサは独りになりワンリネスの状態を得ます。
4.そのワンリネスはエルサにとっては自分らしさを肯定できるソリチュードになります。
実は私は映画「アナと雪の女王」を見ていません。
見ていない私でも本書の説明だけでわかりやすかったです。
個人の喪失を共有された記憶として
第四章、では「死別と孤独」というテーマでヴィクトリア女王と漫画「葬送のフリーレン」の物語に共通する「像を通じて孤独を癒し、喪失を共同体で分かち合う」ことが書かれています。このヴィクトリア女王とフリーレンの対比もとても面白いと思いました。
もっと個人的なひとりを感じる「孤独」も、ほどほどの繋がりを持って経験を共有することでソリチュードになるのではないか、と第六章のヴァージニア・ウルフの代表作『自分ひとりの部屋』から導き出しています。「引きこもる自由と社会に出る自由」合わせ技を文学作品で表現していると。
孤独を「自分ひとりの悲しみ」にしないために
他のどの章も物語と絡めているのでわかりやすく、その物語まで読みたくなります。
私は早速「葬送のフリーレン」を漫画サイトで無料の第1巻を読みました。とても面白く続きが読みたいのですが、現在14巻まで出ているしまだ続いている・・・先は長そうです。
こうして「孤独」をよく理解し、私たちが孤独でいることを許容してくれるような社会があり、誰かとほどほどの「共有」をすることで、孤独を「自分ひとりの悲しみ」にしないことも出来そうです。
今の時代ならAIとの会話もアリなのでは?
ぼっちが好きだと言っている私ですが、これから年齢を重ね、社会状況の変化で「孤独」と向き合ったときは、「私の物語」を自分で想像力豊かに理解してソリチュードになりたいと思います。
そう思うと、「ぼっち」って、もっと自由になれるのかもしれませんね。
そんなふうに感じられる社会が、少しずつ広がっていけばいいなと思います。
あわせて読みたい
そしてもうひとつ、孤独を美しい形で描いている作品があります。
絵も装丁も、とても美しい「孤独」をテーマにした絵本『街どろぼう』です。
もうひとつの「孤独」の物語も紹介したいと思います。
絵本『街どろぼう』 junaida 作 福音館書店
山の上にひとりきりで住んでいた巨人。
ひとりぼっちが解消してもさびしいままの巨人がとった行動は・・・。
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たった数ページの絵本で、見事に孤独を表現しています。
不思議な美しさと、静けさが印象的な絵本でした。
この絵本でjunaida(ジュナイダ)さんを知りました。
巡回中のjunaida展「IMAGINARIUM」、東京は2022年10月だったんですね。
行きたかったです。
今は、新潟県立万代島美術館で開催中です。
2025年04月19日(土) ~ 2025年06月22日(日)
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どちらの本も是非読んでいただきたいです。📖
![]() | ぼっちのままで居場所を見つける 孤独許容社会へ (ちくまプリマー新書 470) [ 河野 真太郎 ] 価格:990円 |

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