知られざる北欧デザインの巨匠──タピオ・ヴィルカラ展へ

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フィンランドデザインに魅せられて

自然をモチーフに洗練された美しさのフィンランドデザインが、私は大好きです。
建築から家具、食器、雑貨に至るまで、多くの日本人の感性に響くデザインだと思います。
そんなフィンランドのモダンデザイン界で、圧倒的な存在感を放つのが、タピオ・ヴィルカラ。
現在、東京ステーションギャラリーで開催されている彼の日本初回顧展に行ってきました。

🗓 タピオ・ヴィルカラ 世界の果て
2025年4月5日(土)~6月15日(日)

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て
東京ステーションギャラリーでは2025年4月5日(土)~6月15日(日)の間、展覧会「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」を...

私とヴィルカラの最初の接点

タピオ・ヴィルカラの名前を知る前、私は彼の妻であるセラミック・アーティスト、ルート・ブリュックの展覧会を通してフィンランドデザインに惹かれていました。
その後、ある北欧ヴィンテージ雑貨店で偶然出会ったグラスが、ヴィルカラとの本当の出会いでした。

厳しい自然を閉じ込めたグラス

1960年代にデザインされた「ICE BREAKER(砕氷船)」シリーズのグラス。
厚い底には、砕氷船で砕かれた氷山や氷のかけらのデザインが閉じ込められ、北欧の厳しい自然がガラスという素材で見事に表現されています。

ウイスキー用のグラスとして購入。

ガラス作品の魅力

ヴィルカラのデザインキャリアは、イッタラのガラスデザインコンペから始まりました。
その後40年にわたって数多くの作品を生み出し、今回の展示でも代表作の数々が紹介されています。
その造形美は、思わず手に取ってみたくなるような親しみと、作品としての崇高さをあわせ持っています。

図録より シンブッカ/貝殻
図録より カンタレッリ/アンズタケ

木の曲線に命を吹き込む

ガラスだけでなく、木材にも革新的なアプローチをしていたヴィルカラ。
「リズミック・プライウッド」と呼ばれる作品群は、木の板を幾層にも重ね、削り出すことで流れるようなフォルムを生み出しています。
会場で目にしたとき、そのスケールの大きさと造形の美しさに圧倒されました。
曲線のバランス、隆起したかのような立体的な表現は職人の技巧ならではの美しさでした。

 図録より 写真右ページ コティロ/巻貝
図録より ピュッレ/渦巻

静けさの中で生まれたデザイン

ヴィルカラは国際的に活躍する一方で、ラップランドの静寂をこよなく愛し、定期的にイナリという地で暮らしていたそうです。

映像で見るヴィルカラの姿からは、「自然の中で生きること」がそのまま創作活動につながっていることが伝わってきました。デザインとは、こうした暮らしの延長にあるのかもしれません。

世界の果て「ウルティマ・ツーレ」

展覧会の最後に展示されていたのは、「ウルティマ・ツーレ」。
ラテン語で「世界の果て」を意味するこの言葉は、ヴィルカラにとって象徴的なモチーフのひとつです。

同じ名前を冠しながら、ガラスと合板という異なる素材で表現された2つの作品が展示されており、彼のデザインの幅と深みを感じさせてくれました。

ウルティマ・ツーレ 美しいガラスの集合美に見惚れます。
ウルティマ・ツーレ 1967年モントリオール万博でのレリーフ

余韻にひたる定番コース

展示を観たあとの私のお決まりのコースは、大丸東京店8階にあるイノダコーヒー
京都旅でも必ず立ち寄る、大好きな喫茶店です。

落ち着いた空間で、美味しいコーヒーをいただきながら、展示の余韻にひたる──それもまた鑑賞の一部のように感じています。

静かで落ち着ける店内

図録をめくる喜び

会場では図録も購入しました。ページをめくるたびに、作品の美しさがよみがえってくるようです。
紙幣のデザインやヴェネツィアでの取り組みなど、まだまだ紹介しきれない魅力が詰まっています。

今回の展覧会は東京ステーションギャラリーでの開催がまもなく終了しますが、今後全国を巡回予定とのこと。
お近くで開催された際は、ぜひ足を運んでみてください。

終わりに──静けさと躍動を併せ持つデザイン

繊細なガラスと大胆なオブジェ、
華やかな国際的な舞台と、ラップランドの静かな森。

相反するものを軽やかに行き来するタピオ・ヴィルカラの作品からは、自然と人との関係性、ものづくりの本質が垣間見えるようでした。

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魅力的な本

フィンランド最北の地ラップランドの氷が融ける様子に着想を得てデザインされたグラス

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